Vol.6 感染予防

フィトテラピーの本場フランスの、ハーブ専門薬局「エルベオ」のオーナーであるフランソワ・プティテさん直伝の処方せんを、月に1回ご紹介するこのコラム。今月の処方せんは「感染症予防」です。毎年冬になると、誰もが避けて通れない風邪やインフルエンザといった感染症。その予防の要である“免疫”を強化して、感染症を寄せつけない体を目指すフィトテラピーをご紹介します。

身体組織が外来の病原体(バクテリア、ウイルス、真菌、寄生虫、腫瘍細胞)に接触すると、体は免疫システムである防衛戦略を立てます。第一の防御系統としては、マクロファージ、多核細胞、ナチュラルキラー細胞などと呼ばれる細胞群。炎症性因子の増殖によって、外来微生物を排除する貪食細胞や局所抗感染因子が現れ、感染部位で前述の細胞が蓄積されていきます。

第2の防御系統は、また別のタイプの細胞。抗体生成、細胞性応答のそれぞれを担うBまたはTリンパ球の反応によって構成されています。数多くのハーブ、特にエキナセアは、これらの免疫機能を活性化することが知られています。エキナセアは、風邪およびインフルエンザ症候群の予防のための臨床的治療に有効です。それだけでなく、身体の免疫を強化することが望まれるときは、いつでもエキナセアを推奨できます。

治療に使用されるエキナセアは、Echinacea purpurea、E.pallida、または E.angustifoliaの種に属し、この3種は同じ薬効をもっています。もともと北アメリカ由来の植物で、抗生物質、抗炎症および傷痕治療にと、アメリカインディアンによって広く使用されていました。主にその驚くべき免疫特性により、エキナセアは現在人気を博しています。

活性化合物は数多くあり、それらは相乗的に作用するようです。免疫細胞の増殖、貪食細胞の活動刺激のほか、気管支感染の予防および治療における有効性など、さまざまな機能が臨床研究で明らかにされています。毒性はないのですが、8週間以上の使用は避けた方がよく、また自己免疫疾患や免疫抑制剤治療を受けている方にはおすすめできないことも覚えておきましょう。

エキナセア

学名:Echinacea purpurea, E.pallida, E.angustifolia
仏名:Echinacée
英名:Echinacea
和名:ムラサキバレンギク
科名:キク科

プティテさんのフィトテラピストとしての経験談

Xご夫妻は60代で、ここ数年、冬期の病気に感染しやすくなっていました。寒さを感じやすく、家を暖め過ぎるため、よく喉が痛んだり、風邪をひく傾向があるといいます。そこで2年前から、彼らはエキナセを基本とした予防方法を実行し始めました。間に15日間の間隔を挟む、3週間ずつの2つの治療です。彼らの感染の頻度と病気の重症度はかなり軽減したため、今年はエキナセアの煎じ薬の予防法を取り入れることにしました。治療期間中に旅行の予定があるので、治療の前半の周期には煎じ薬を、後半にはアルコールエキス(チンキ剤)でのケアを交互に行う予定です。

今日のレシピ

冬到来に備えて、鼻やのどなどの感染症、風邪やインフルエンザウイルスにかからないよう、免疫を刺激することは有用かもしれません。そこで、免疫を刺激する3つの植物を組み合わたエリキシル(チンキ剤)をおすすめします。エキナセア、キャッツクローおよびラパチョは免疫刺激剤であり、スターアニスを混ぜることで風味が良くなります。

【材料】
エキナセア(全草) Echinacea sp ……… 1
キャッツクロー(樹皮)Uncaria tomentosa ……… 1
ラパチョ(樹皮)Tabebuia ipe, T ……… 1
スターアニス(実)Illicium verum ……… 1
※数字は分量の比率です。

【作り方・飲み方】
(1)それぞれのハーブを同量ずつを容器に入れ、強いアルコール(ウォッカ/ジン等 アルコール度数40%程度のもの)を注ぐ。
(2)21日間置いた後、フィルターで濾す。
「このエリキシル(チンキ剤)を毎日小さじ一杯、3週間飲み続けます。ただし、使用は成人のみで、自己免疫疾患の方は医師の指示に従ってください。ティザンヌを飲むのでもよく、その場合は10g〜15gの根を85〜95℃のお湯1リットルで5分間煎じ、その後10分間蒸らしたものを50ミリリットルから1リットル、一日かけてお飲みください」。

François Petitet / フランソワ・プティテ

パリ第13大学 フィトテラピー・アロマテラピー科を卒業。パリ第5大学にて薬学博士号を、コレージュ・ド・フランスにて神経科学博士号を取得。パリ病院にてインターン、製薬会社にて主任科学者、最高科学責任者、最高技術責任者を歴任。エルボリステリーHerbéoの創設者でもあり、パリ第13大学 臨床フィトテラピー・ディプロマ・ユニバーシティーでは生薬についての講師を務める。

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