Vol.4 月経前症候群(PMS)

フィトテラピーの本場、フランスのエルボリストリー(ハーブ専門の薬局)「エルベオ」のオーナー、フランソワ・プティテさん直伝の処方せんを、月に1回ご紹介するこの連載コラム。今月の処方せんは、女性にとって日常的なトラブルの代表といえる、「月経前症候群」です。月経前にあらわれる様々な症状を全般的にやわらげてくれる頼もしいハーブと、相乗効果を高めるブレンドハーブティーをご紹介します。

女性の生理機能は、ホルモンの微妙なバランスによってコントロールされています。エストロゲンは周期の最初の時期に多く分泌され、その後はプロゲステロンが支配的に。そして、このホルモンの周期変化は、肉体的および精神的な影響を及ぼします。さまざまな一過性の障害や、不調などによって特徴づけられる月経前症候群は、女性によっては月経前にあらわれ、月経が終わると消えていきます。

その症状は人によって違いがあり、環境的・感情的な要因に大きく左右されるのも特徴です。最も一般的な症状は手足のむくみ、乳房と腹部の膨満感。吐き気や嘔吐といった消化器障害や、めまいや頭痛などの神経系障害もポピュラーな症状です。さらに、しばしば過食や過度の神経過敏なども伴います。タイミングもそれぞれで、女性の約40%がなんらかの症状に悩まされていると推定されています。

チェストべリーは、地中海地方に生息する低木です。青紫色の房状のその花は、コショウの実のような、灰色の小さな丸い実をつけます。性欲を減退させる効果もあることから、“僧侶のコショウ”という異名も。豊富なフラボノイドを含み、シネオールとピネンといった精油も得られます。これらの中枢神経系に及ぼす作用によって、女性ホルモンの分泌を標準化し、月経前症候群を減少させ、妊娠を促し、月経サイクルの規則性を促進するのです。

チェストべリー

学名:Vitex agnus-castus
仏名:ガティリエ
和名:イタリア(セイヨウ)ニンジンボク
科名:シソ科

プティテさんのフィトテラピストとしての経験談

マダムBは、これまで月経前症候群に苦しんだことはありませんでした。彼女は44歳で、更年期でもありません。けれども、18か月前から月経が近づくと手足がむくみ、いつもの服がきつく感じるようになりました。そして月経前の期間中、気分の優れない状態が続くようにもなりました。身近な人たちは時々彼女に「過敏過ぎる」と注意するのですが、やがて彼女に過剰な反応を生じさせず、何かを言うことができなくなってしまいます。彼女もそれを自覚しつつ、自らの怒りを押さえられないことに罪の意識を感じていたのです。

そこで私はマダムBに、チェストベリーとクミスクチン、ネトル、ヴィンニュ・ルージュのブレンドハーブティーを提案し、月経が始まる前の10日間、飲み続けてもらいました。旅行などでハーブティーを飲むことができないときは、チェストべリーのタンチュメールを1日あたり50滴摂るようにしてもらいました。彼女の症状は今ずいぶん緩和され、月経前の到来を恐れることなく、安らかに過ごせるようになりました。その効果に、彼女は非常に喜んでいます。

今日のレシピ

月経前症候群の多様な症状を緩和するための、ブレンドハーブティーをご提案します。女性ホルモンの分泌を標準化するチェストべリーに、神経過敏や脅迫的な不安感を緩和するのに役立つパッションフラワーとメリッサ(レモンバーム)。メリッサはチェストべリーの作用を強化する働きも。さらに、静脈循環に作用するヴィンニュ・ルージュ(赤ブドウの葉)、ドレナージ(体内に貯留した消化液、膿、血液や浸出液などの体外への排出)や浮腫の吸収の亢進、鉄分をもたらすネトルを組み合わせて、相乗効果を高めます。

【材料】
チェストベリー(実)Vitex agnus-castus ……… 2
パッションフラワー(地上部)Passiflora incarnata ……… 1
メリッサ(葉)Melissa officinalis ……… 1
ヴィンニュ・ルージュ(葉), Vitis vinifera tinctoria ……… 1
ネトル(葉)Urtica dioica ……… 1
※数字は分量の比率です。

【作り方・飲み方】
(1)ブレンドしたハーブ大さじ3〜4杯を水1リットルで煎じる。
(2)そのまま5分間蒸らして濾す。
「月経が始まる前の10日間、1日を通してお飲みください」。

François Petitet / フランソワ・プティテ

パリ第13大学 フィトテラピー・アロマテラピー科を卒業。パリ第5大学にて薬学博士号を、コレージュ・ド・フランスにて神経科学博士号を取得。パリ病院にてインターン、製薬会社にて主任科学者、最高科学責任者、最高技術責任者を歴任。エルボリステリーHerbéoの創設者でもあり、パリ第13大学 臨床フィトテラピー・ディプロマ・ユニバーシティーでは生薬についての講師を務める。

herbeo / エルベオ

Adress:31 Rue des Ayres 33 000 Bordeaux France
Tel:+33 6 8336 4977
   +33 5 5638 4751
Mail:contact@herbeo.fr
www.herbeo.fr
www.facebook.com/herbeo